文学
川端文学は、僕個人の思いでは、 高校生の頃の、いささか病的な、痛んだ心の琴線に、 よく和して響きあっていた世界だなぁ〜、となる。 あの頃は、川端の幻想的な映像世界に惑溺していただけだった。 が、今となれば、登場人物の、屈折した気持ちや行動を、…
僕の高校生の時間を、塗り固めていたのは、ヴィスコンティーと三島由紀夫でした。 貧乏人のゲイが、貴族趣味に身を浸すといった、典型的パターンです。 そんな三島フリークであった僕が、30歳を過ぎたころから、なんとなく三島由紀夫の作品に嫌気を感じ始…
谷崎の三番目の奥様である松子夫人は、根津商店と言う大店の御寮さんでした。 谷崎と松子夫人のお揃いの、有名な2ショットです。 松子夫人は谷崎との結婚の前に、大阪の豪商根津商店の主人との間に、一男一女をもうけています。 しかし、根津商店は倒産し、…
サド侯爵夫人 ルネ 新妻聖子モントルイユ夫人(ルネの母) 剣幸アンヌ(ルネの妹) 佐古真弓シミアーヌ男爵夫人 福井裕子サン・フォン伯爵夫人 椿真由美シャルロット(召使) 米山菜穂 三島の『サド侯爵夫人』の舞台録画を観た。 聞いたことのない役者ばかり…
「怒りを詠え。女神よ。ペリウスの子、アクレスの怒りを。」と格調高く始まる『イリアス』。 言わずと知れた大叙事詩で、紀元前8世紀頃のギリシャの詩人ホロメスが作った、あるいは吟じたと言われている。 このホロメス、実在の人物かどうかも、よく判って…
セルバンテスは、日本で言えば、戦国時代から江戸時代に移る頃と同時代の人である。 シェークスピアとも同時代の人で、同じ日に死んだと言われるが、それは間違っているらしい。 カトリックの暦(グレゴリオ暦)と、イギリスの暦は違うからだ。 ところで、セ…
『失われた時を求めて』の全巻を¥13000-ぐらいだったか、大学のコープで購入したのは、今から30年も前です。 大学時代、何度も挑戦しましたが、結局読み進めることができず、完読できたのは30代の後半だったと思います。半年かけて読みました。 ナ…
日本の小説家で、文句なく一番なのは谷崎潤一郎でしょう。 これは、相当の自信をもって言えます。 あらゆる角度から語ることができる大作家です。 ここでは、『春琴抄』の文章の美しさについてお話します。 日本には短歌をいう、ことばの音楽があります。 五…
マンの小説世界は、わたくしの大学時代を染め上げていました。 不気味なユーモアセンス。 自虐的であると同時に高踏的なテーマ。 『芸術』(根性)と『市民』(根性)の葛藤。 貴族的で保守的なブルジョア趣味。 回りくどい屈折した文章。 皮肉タップリの狂…
ヨーロッパでは『ファウスト』は、日本の『桃太郎さん』のように扱われていたらしい。 当然、あのゲーテも『ドクトル・ファウスト』の人形劇(旅回り一座)を子供の頃に観て、あの偉大な戯曲を書いたのです。 子供からお年寄りまで、ヨーロッパ(特にドイツ…
島崎藤村の初期には、ややシャベリ過ぎ意気込み過ぎの、若気の至りの作品がある。 しかし、『千曲川のスケッチ』や『若菜集』を読めば分かるが、若いころから文章の叙情の可能性を分かっていた、そんな作家である。 叙情といえば、ノーベル賞作家 川端康成が…