『ゲイ術 三昧の日々』

このブログは、管理人(ゲイです)の『オペラ』に関する個人的な備忘録です。そして、もう一つ、日々の感慨の記録です。

『塩船 観音寺』の美

ボクは、建築物一つだけを取り出して愛でることが苦手です。
苦手と言うか、満足できないのです。

 

ボクは、目に入った景色を、隅々まで鑑賞します。
ですから、『もみじ饅頭』と書いた幟などがあると、
視界から除外しようとしても剥がれず、半減どころか、
マイナスの嫌な記憶だけが残ります。

 

建築物の、景色のダイナミックさも重要視します。
つまり視界の画像が、ドラマを語っていなければ、満足できないのです。

 

視界のドラマとは、遠と近、直と曲、光と陰、躁と鬱。
それらが、視界の中に混在しなれば、満足できないと、そう語っています。

 

建築物には、統一感を求める傾向があります。
藁や萱、杮を葺いた建物は、板壁で、積み木細工のような地味な建築物だと、
違和感を感じない。

 

瓦屋根には、漆喰の壁がいい。
つまり、植物には植物、鉱物には鉱物の組み合わせ一番安定しているように思います。
ただし、檜皮葺きは、白い漆喰の壁もよくマッチしています。
檜の皮の質感と色彩が、白い漆喰とシックリ合うのでしょうか。

 

ところで、『塩船観音寺』と言う、実に鄙びて味わいのある寺があります。

 

青海線河辺駅で降りて、バスに乗り継ぎ、人家疎らな山間のバス停からあるいて10分。
当然、時代劇のセットのような、それもわざと古びかせたような、藁葺きのくすんだ仁王門が現れます。
近づいて見上げると、厚く葺いた藁葺き屋根が素敵です。

 

仁王門の奥に阿弥陀堂があります。
葺き板壁の詫びた味わいのある、そして質的にも色合い的にも統一感のある、
こじんまりとしたお堂です。

 

杉の大木を横目に、薄暗い山道を登ると、本堂があります。
この画像では、真言宗ならではの幕が張ってあるので、雰囲気は伝わりにくいですが、
地元の人々が、大事にしてきたお堂であることが、よく伝わる建築です。
地味で、粗忽。
関東がその昔、文化から離れていた場所であることが、実によく伝わります。

 

※本堂・阿弥陀堂・仁王門は室町時代の建築物で、重要文化財に指定されています。

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