『ゲイ術 三昧の日々』

このブログは、管理人(ゲイです)の『オペラ』に関する個人的な備忘録です。そして、もう一つ、日々の感慨の記録です。

『三千院』の美

 

鼻歌交じりに、細い坂道を登った記憶がよみがえります。

 

その坂道は、木立と小川に沿った山道で、風情はタップリでした。
ところどころに土産物屋があり、情緒を打ち消される景色もありましたけどね。

 

画像は、絵葉書でもおなじみの『極楽往生院』です。
厳密には、門跡寺院である『三千院』とは関係のない建物で、
移築されたものらしいです。

 

苔むした湿った庭の向こうに、
杮葺き板壁の建物が見える情景は、極上の美です。
破風の妻壁の木連格子(きづれこうし)がまたいい。

 

この『極楽往生院』の内側いっぱいの空間に、
はみ出しそうな勢いで、阿弥陀三尊が鎮座しています。
この、はみ出しそうな風情がまたいいのです。

 

金の箔がやや脱落した阿弥陀仏。
平安中期の様式で、まだ健康的で穏やかな風情を持った仏です。国宝です。

 

播磨 小野の、『浄土寺』の快慶作の阿弥陀如来立像も国宝ですが、
『三千院』の阿弥陀様の方がずっといい。

 

ところで、『格』や『迫力』や『技量』において国宝と重要文化財には、
画然たる差があります。
それは認めた(知った)うえで、言うのですが、
重要文化財には肩肘張らない、ホッとするような『美』があります。
この『極楽往生院』の建物も重要文化財ですが、どうでしょう、
とても優しく垢抜けていて、爽やかな『美』に満ち満ちていませんか?

国宝となると、ちょっと『捻り』(屈折)がかかった、近寄りがたい完全完璧な物体に思えるのですよね。

重要文化財の方が、純情というか親しみがあると言うか、悪く言えば「間抜け」なところがあって、個人的には国宝より好きなものが結構あります。

特に仏像や建築に、そんな愛嬌のある『美』が充溢したものが散見されます。

国宝って、完全完璧で、付け入るスキがないと言うか、生意気な感じが割合としませんか?

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