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『ゲイ術 三昧の日々』

このブログは、管理人(ゲイです)の『オペラ』に関する個人的な備忘録です。そして、もう一つ、日々の感慨の記録です。

トーマス・マン『ファウスト博士』

ヨーロッパでは『ファウスト』は、日本の『桃太郎さん』のように扱われていたらしい。

当然、あのゲーテも『ドクトル・ファウスト』の人形劇(旅回り一座)を子供の頃に観て、あの偉大な戯曲を書いたのです。

子供からお年寄りまで、ヨーロッパ(特にドイツ)の民衆に知れ渡っていた物語を、20世紀の大作家トーマス・マンは、「ある偉大なる音楽家・アドリアン・レーヴェルキューン」を「ファウスト」に見立てて、小説に仕上げなおしています。

つまり、お伽噺のような『ファウスト』の物語があり、それを基にしたゲーテの『ファウスト』があり、更に20世紀のトーマス・マンがやき直した『ファウスト』があるのです。

そしてその前提も、マンの『ファウスト博士』のお膳立てな訳なのです。

手が込んでいると思いませんか?

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「ある偉大なる音楽家・アドリアン・レーヴェルキューン」の半生を語るのは、彼の友人で古典語学者 ゼレヌス・ツァイトブローム。

マンが大好きなテーマである、『デモニッシュ・芸術』と『市民性』の葛藤は少し身をひそめ、その二つの対立を超越たような、諦念とでも言うような『デモニッシュ・芸術』との和解を描いているように思える作品。

いえ、和解というより、『デモニッシュ・芸術』の勝利が前提のようにも思える作品です。

ナチス台頭の足音が「ザッ、ザッ、ザッ」と小説の中で常に響いており、その音の上に不気味なテーマが、淡々と進んでいきます。

回りくどい表現が多々見られますが、これはマンが意図して書いたテクニックで、この小説のディレッタントな雰囲気を否が応でもでも盛り上げます。

非常に手の込んだ、偉大なるパロディー小説です。

管理人はドイツ語が分からないので、マンの小説が原語で読めないのが残念です。