カタルシスに溢れた 『トリスタンとイゾルデ Tristan und Isolde』 133
133、『トリスタンとイゾルデ Tristan und Isolde』 2013/8/22
初演:1865年6月10日ミュンヘン宮廷劇場
リヒャルト・ワーグナー(1813~1883)
メトロポリタン歌劇場管弦楽団&合唱団 指揮:ジェイムズ・レヴァイン
演出:ディーター・ドルン 美術&衣装:ユルゲン・ローゼ 1999年、メトロポリタン歌劇場
ジェーン・イーグレン(イゾルデ) ベン・ヘップナー(トリスタン) カタリナ・ダレイマン(ブランゲーネ)
ハンス=ヨアヒム・ケテルセン(クルヴェナール) ルネ・パーペ(マルケ王) ブライアン・デーヴィス(メロート)
自分で自分のことを「リヒャルト、お前は悪魔の申し子だ!」と言わしめた作品『トリスタンとイゾルデ』。
舞台は、照明効果が非常によく出来て、人物の一人一人が切り絵のようにはっきり浮かび上がっているので、ボヤボヤ感がなく、明晰です。
友人が、この楽劇は、不自然で面白くないと言いました。
しかし恍惚を、これでもかこれでもかと折り重ねるために、薬と言う前提があるから僕個人、はスッキリと腑に落ちている。 そもそも陶酔的な恋は、大の大人が冷静に考えると、理不尽なものです。
しかし、『惚れ薬』を飲んだのなら、やむを得ませんよね。
この辺の、浮世離れさせ方の手法が、ワーグナーの知性を感じさせます。
ジェーン・イーグレン:イゾルデは、今ひとつでした。
個人的には、喚くぐらいの迫力があるイゾルデが、好きです。
ジェーン・イーグレンはデブだけに、その喚きに期待したのだが、身体に似合わずデリケートな歌い方でした。
人間にとって、芸術はすべて、カタルシス(「精神の浄化作用」もともとは、アリストテレスが『詩学』に書き残した悲劇論から、「悲劇が観客の心に怖れと憐れみを呼び起こし感情を浄化する効果」をさす演劇学用語。「仮構の世界に陶酔することよってカタルシスをおこなう」)を満足させるための手法。
『トリスタン』は、カタリシスを行うためには、最短の舞台芸術です。
そして、そのアプローチは抑揚と絶叫の緩急にあると思っています。