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『ゲイ術 三昧の日々』

このブログは、管理人(ゲイです)の『オペラ』に関する個人的な備忘録です。そして、もう一つ、日々の感慨の記録です。

またまた パゾリーニ そして映画の、顔と化粧について

パゾリーニの映画が特出していることは、物語が絵空事であっても、役者がリアルなところです。
『奇跡の丘』のキャストの顔を観て下さい。
まず、若い頃のマリア。

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中世イタリア教会の壁に描かれているような顔だと思いませんか?
イエスの顔。
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神経質そうな、その辺のお兄ちゃんのようです。
しかし、オーラは、何気にあります。この何気感がいい。
そして、ヨゼフ。
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もっともっと、その辺の人の顔。
米屋の親父や、郵便局人や、マンションの管理人。そんな感じ。
人の良さそうな感じや、気弱な感じが、滲みでてますよね。
サターン。
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これまた、その辺の顔。
目の下にクマあるとか、頬がこけているとか、唇が薄いとか、耳が尖っているとか、そんな型通りの悪魔の気配すらなく、その辺の人の顔。
悪魔は、悪魔と解るようでは、悪魔ではないですよ。
流石に、人の良さそうな雰囲気はないですが、ちょっと癖ありそうなその辺の人の顔。しかし、よく観るとこれ以上の悪魔顔はない思いませんか?
最後に、年老いたマリア。
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パゾリーニのお母さんらしいです。
パゾリーニは、本当に親孝行な男ですよね。
母親をマリアにしたのです。
しかし、ただの老婆です。
このパゾリーニのお母さんの演技が、素人とは思えないほど、上手でした。
 
さて、話はとんでもない方向に飛びます。
昔の、既婚日本女性の化粧法は、白粉を厚く塗り、『笹紅』と呼ばれた赤ドス黒い緑色に光る口紅(昔、よく使っていたアカチンが乾いたような色に近いそうです)を挿し、眉を剃り落としていました。

30年以上前『大奥』と言うテレビドラマで、名女優 浪速千栄子(あのオロナインのおばあちゃん女優)が、藤岡という上臈をやっていました。
そのころの時代劇は、割合と時代考証がしっかりしていて、この画像のような浪速千栄子が画面いっぱいに映し出されて、『ギョお』としたものです。

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時代劇は、やはりリアル感がないと面白くないです。
特に、衣装や化粧には、気を使って欲しいと思います。
でなければ、時代の空気が伝わりません。

下に、幕末の女性を、リアルにかつ客観的に伝えた文章を載せます。
この文章は、ペリー提督の遠征記です。
穏やかに微笑してルビーのような唇が開いていたので、ひどく腐食された歯茎に生えている一列の黒い歯が見えた。日本の既婚婦人だけが、歯を染める特権をもっており、染めるには『おはぐろ』という鉄の粉と酒とを含んだ汚い成分の混合物を用いる。
この混合物は、その成分から当然に推察されるように、心地よい香りもないし、衛生的でもない。それは非常な腐食性のもので、それを歯につけるときには、歯茎や唇などの柔らかい組織を何かで覆う必要がある。さもなくば、ちょっとでも肉にふれると直ぐにただれて、紫色の斑点が出来てしまう。いくら注意しても、歯茎は腐って赤い色と活力を失う。
この習慣は、夫婦間の幸福を導くことがほとんど無いと考えるべきであろう。また、当然、求婚時代の夢中なときに接吻してしまわなければならないことも推測されるだろう。しかし、未来の花婿は往々にしてこの報酬さえ失ってしまう。なぜなら、ある若い婦人たちは、縁談を申し込まれたときに、このお歯黒をはじめることも珍しくないからである。(これは口臭のことを言っているのであろう)

この厭うべき習慣は、他の習慣、即ち紅で唇を染めることで一層明らかになる。赤くした口は、黒い歯と著しい対照をなすからである。「べに」と呼ばれる日本の化粧品は、紅花でつくられ、陶器の盃に入れてある。薄く一塗りすると鮮やかな赤色となるが、厚く塗ると暗紫色となる。この暗紫色が一番いいとされている。


黒澤明の『蜘蛛巣城』の鷲津浅芽役の山田五十鈴のメイクの凄さは、語り草になっていますね。
能面の逸話を今更出すまでもなく、凝って、凝って作り上げたメイクです。
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特に狂気に陥った、下の化粧は凄まじいです。

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パゾリーニの映画の人物は、あまりゴテゴテとしたメイクはしていません。
ただし、『アポロンの地獄』のシルヴァーナ・マンガーノは例外です。

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この蒼白なメイクは、浪速千栄子の上臈藤岡を彷彿とさせませんか。

シルヴァーナ・マンガーノは、結構好きな女優でして。
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ベニスに死す』より

 

ヴィスコンティの『家族の肖像』では、大富豪の夫人ビアンカを毒々しく演じました。そのメイクが、なんとも強烈で、しかし、素敵でした。

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『アポロンの地獄』のほうが、『家族の肖像』より古い映画です。
ですから、きっとヴィスコンティパゾリーニの『アポロンの地獄』のマンガーノに刺激されて、あのシルヴァーナ・マンガーノのメイクを作り上げたのだと思います。

パゾリーニは、日本の昔の婦人の化粧を、日本映画を通して知り、それをシルバーナ・マンガーノにさせ、更にヴィスコンティが真似た、なんて想像すると、面白いです。

 

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『アポロンの地獄』には、アリダ・ヴァッリが、オイディプス(フランコ・チッティ)の育ての母親役で出ていました。
どこかで見た女優だなぁ、と思いきや、ヴィスコンティの『夏の嵐』の女優でした。

全く関係ない話ですが、ヴィスコンティの『夏の嵐』の主役は、アリダ・ヴァッリです。
敵国オーストリアの中尉と浮気する、伯爵夫人を演じています。
管理人は、この映画の冒頭のフェニーチェ歌劇場のシーンが大好きです。
特に、このオペラボックから『イル・トロヴァトーレ』の舞台を望むシーンは、鳥肌立つほど素敵です。

 

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王女メディア』のマリア・カラスは、よくなかったです。

なんで、カラスを使う必要があったのか?

話題作りのためだとしたら、パゾリーニのそのお根性に、少しがっかりします。