やはり三島由紀夫の描く人物は不自然 『サド侯爵夫人』
サド侯爵夫人 ルネ 新妻聖子
モントルイユ夫人(ルネの母) 剣幸
アンヌ(ルネの妹) 佐古真弓
シミアーヌ男爵夫人 福井裕子
サン・フォン伯爵夫人 椿真由美
シャルロット(召使) 米山菜穂
三島の『サド侯爵夫人』の舞台録画を観た。
聞いたことのない役者ばかり(ルネを演じた新妻聖子は歌手らしい)であるが、発声もハッキリしていて、この言葉の機関銃戯曲としては申し分のない役者であったと思う。衣装も面白かったが、時代(時間)が、経過しても同じ衣装であったのは、ケチ臭かった。
しかし、三島の作品に描かれる人物は、面白いが不自然すぎて、今のボクは満足できなくなっている。考えれば、彼がこの作品を書いたときより、ボクは歳をとっている。だから、人並みに人間の醜さを知ってしまい、机に噛り付いていた三島の描く世界が、きわめて絵空事に感じられ、胃もたれがしてくるのだ。
『サド侯爵夫人』のルネが口にする「ルネ(サド侯爵のこと)は、私なのですから」なんて言う台詞は、この戯曲の一つの山場であるが、三島が面倒くさくなって、お茶を濁したような、やっつけ仕事に思えてしょうがない。
いい舞台設定で、戯曲をすすめておきながら、ツメが甘いように思われる。