『紫陽花』の美
満艦飾に花(実際は萼らしいですが)をつける西洋紫陽花は、あつかましい。
西洋紫陽花が、ヴィスコンティーの映画『ベニスに死す』のロビーに、効果的に飾られていたが、
あれだけの重厚な背景の中でないと、映えない植物。あれなら、許せる。
19世紀の貴族の風物を描いた挿絵を見たことがある。
その舞踏会場の挿絵では、大輪の菊を切花にして、
景徳鎮や伊万里の大壷にドッサリ活けて、アチコチに配置していた。
あれも、いい感じである。
西洋紫陽花より、朽ちたような額紫陽花や山紫陽花など、
日本古来の紫陽花のほうが、奥ゆかしい。
しかし紫陽花は、重なりあう葉が一番の見処ではないだろうか。
特に、雨に打たれたあとの葉の瑞々しさ。
葉を見たあと、ふと目を落とすと、
雨に散った紫陽花の藍の一片が、アスファルトの道に貼り付いている。
なんて、美しいのであろうか。