ヴィスコンティーの粘着テープ 『熊座の淡き星影』
『熊座の淡き星影』を鑑賞した。
ヴィスコンティーの、映像の特徴の一つに、これぞと言った人物の顔のドアップがある。だれでも、かれでも、アップするのではない。
これぞと言った人物だけを、メリハリつけてアップし、それをストーリーの流れのアクセントにしているのだ。
それも物凄い極端なアップで、たっぷりと顔を見せ続けてくれる。
その時カメラは、ヴィスコンティーの視線そのものであり、多分ヴィスコンティーは、そのように人を見ていたのであろう。
粘着テープのような、気持ち悪いほどの執着性がある目である。
そして、いやらしさと好奇心の混じった甘い秋波の流し終わりと言った風情もある。
『熊座の淡き星影』は、ヴィスコンティーの映画監督歴の、起承転結の、承から転への移行期の作品だが、すでに粘着テープのような視線画像が出来上がりつつある、そんな作品だった。