トーマス・マン『ヴァイマルのロッテ』
マンの小説世界は、わたくしの大学時代を染め上げていました。
不気味なユーモアセンス。
自虐的であると同時に高踏的なテーマ。
『芸術』(根性)と『市民』(根性)の葛藤。
貴族的で保守的なブルジョア趣味。
回りくどい屈折した文章。
皮肉タップリの狂言回し。
すべて、大好きでした。
『ファウスト博士』の次に話したいのが、『ヴァイマルのロッテ』です。
ゲーテの『若きウェルテルの悩み』を下敷きにした小説です。
このゲーテの作品は、主人公ウェルテルが、婚約者のいるシャルロッテという女性に恋して自殺するまでの小説で、ゲーテの実体験を基に書かれたことになっています。
この基に書かれたと知れ渡らせた、それ自体が小説家の罠かもよ。。。
さて、『ヴァイマルのロッテ』はどういう小説かと言うと、年老いたシャルロッテが、年老いた大ゲーテのいるヴァイマルを訪れ、そのゲーテにも実際会うという、ドイツ文学史上の一大事件を扱ったものです。
実際には、そんな事件はなかったのかも、知れません。
あったのかも、知れません。
つまり「もしも・・・・・・、」の小説です。
さてその「もしもの展開」が、皮肉ぽっくてぇ。
でも、実際は(もっと言えば職業大芸術家とは)そんなものですよ、と言った現実を見せつける展開は、人をからかっているようです。
この小説は、人をおちょくったアッサリしたその展開、その展開を、楽しむと言う、極度の知性を必要とする小説でございます。
以上